バウキール(下あご)増設工事
船で流し釣りをする時、スパンカーを張っても前方(バウ)側の下部(キール)が出っ張っていないとフラフラとして風に立ちにくいのです。以前の船や小さな船の時代には表差し舵という物を作って操作していましたが、やはり一回づつ上げ下ろしするのは面倒くさいものです。そして前艇では下ろした事を忘れて旋回したためにグニャッと支柱が曲がってしまい撤去しました。最近の釣り仕様の船では最初から付いています。横波や追い波の時に舵が取りにくいというデメリットもありますが(直進時の乗り心地は増すというメリットはあります)、安く(1万円以内)自作することにしました。釣友は業者に頼んだら約12万円かかったみたいです。
マリーナに置いてある他船の物を見て参考にします。バウ側のみとセンターキールまで続いている物もありますが、大がかりになるのは避けたいためバウ側のみとします。最初はダンボールで船底のカーブの型紙をとります。増設部の形状は長さ含め色々なパターンを想定しながらベストな物をデザインします(結局は板の大きさで決まりました)。そしてカッターで切り抜きます。やはり底のキール部のカーブのフィットが一番難しいです。切り取った増設キール部を船底にテープで貼り付け感じを見ます。
次にこの型を用い電動ジグソーで板(910×250×18厚ミリ)を切り抜きます。この板だけでは接着の際の船底との強度不足が考えられるため、船底部分に2枚の弓形の板(1×4材)を両サイドから補強するためこれも適当に目分量で切り抜きます。中心板と船底に前後二箇所の穴を少し開けネジで仮留めしてみます。ここまでおおよそ3時間かかり板代は計約1300円でした。実際に浮いている場合と滑走している場合の波の位置も確認済みです。
次に船底とのフィット感微調整と角を削るため、カンナとグラインダーで板をひたすら削ります。とにかくサイドの補強材は水の抵抗をなくすため角を丁寧に何回も現物合わせをして削っていきます。右写真はわかりにくいですが角が丸くなっています。
次に船底にFRP樹脂とガラスマットを貼り付けるスペースを作るため、やや大きめにマスキングテープを貼り(貼ったままだったのが失敗だった)目印とします。細長い枠の部分に剥離剤とグラインダーでペイントを落とし船底のFRP素材がむき出しになるまで削り落としていきます。最後は水洗いして乾燥させます。接着前はさらにアセトンで拭き綺麗にします。剥離剤は以前に使って残っていたので0円で、グラインダーのディスクは200円を3個使用しました。ここまでの作業で合計約7時間かかりました。
次は中心の板をネジで仮留めし左右外側のサンドイッチする木材を木工用ボンドで現物合わせで貼り合わせをします。その後クランプで両側から挟み固定しようと思ったら挟む箇所が丸みがあるため挟み切れません。落ちてきます。急遽手で抑えながら3枚の板を電動ドリルを使い木ねじで固定します(一人なのでかなり苦労した)。そして一旦船底から外し固着するのを待ちます。二人がかりなら楽です。
次に貼り合わせた3枚の板の隙間を木工用パテで埋めます。樹脂を塗れば埋まると思いますが隙間からポタポタ落ちるのを防ぐためとりあえず施行します。ここまでの作業時間は合計約9時間かかりました。
FRP用素材はネット通販(北海道)で購入しました。木材にFRP素材を貼り付け易くするための下地塗料としてプライマー樹脂1kg・不飽和ポリエステル樹脂(ノンパラタイプ) 2kg・硬化剤50g・ガラスマット1040ミリ幅×長さ2m・洗浄用アセトン500ミリリットルのセットが約4200円(消費税・送料込み)です。最後に塗るトップコート黒色は以前に船底を塗った物が余っていますのでそれを使います。
中央の板と左右サンドイッチの補強板との段差の隙間を埋め有るため、ガラスマットを何重も貼っていくのでそのため形状に合わせてカットします。マットはチクチクするので手袋をした方が良いでしょう。また細かな繊維が服にも付きますので作業着(つなぎ)を着用した方が良いです。
貼り合わせて固着した木材をプライマー(そのまま直接ならFRP樹脂は付きにくい)に硬化剤を入れて撹拌して薄く塗ります。板は写真の通りぶら下げて塗ります。こうすることで手で触らなくても良いからです。プライマーや樹脂には硬化剤を入れて使用しますが、外気温により細かな量の使用(計測)が必要です。また硬化する30分以内に作業を終えないとダメです。よって30分以内に作業を終える量で塗らなければなりません。前準備も含め良く考えておかなければなりません。今回は面積が小さいので一回で済みますが、大きな面積の場合でも小分けして塗った方が無難です。プライマーは500gで塗ろうとしましたがかなり余りました。おそらく100gから200g程度だったと思います。ここまで合計10時間です。
一日乾かして船底へ接着する前に貼り合わせた木材の段差をできるだけ無くしたいのでへこんでいる箇所にマットと樹脂を重ねてなめらかなテーパー状に仕上げていきます。私にとってこのFRP積層という作業は初めての経験です。FRPマットを張り合わす箇所へ硬化剤を入れた樹脂を塗り、マットを置きまた樹脂で馴染ませていきます。マットと樹脂の割合もある程度決まっています。マットの隙間には空気が残らないようにハケで押し付けるようにして樹脂を重ねていきます。それをなめらかな曲線を描くように徐々に積層を増やしていきます。
右写真ではわかりづらいですが、上部(海底方面)が薄く、下部(船底接着部)が分厚くなっています。その中間に濃い飴色の部分が見えますが、そこが樹脂とマットが一番多く積層している箇所です。最後は樹脂のみで成形しています。
左の縦方向の写真は船底に合わさるへこんだ部分です。このカーブも船底のキール部に沿った現物合わせです。樹脂は200gで片面を貼り100gで最後の成形(へこんでいる箇所に)で垂らして段差を無くしています。よってここだけで左右600g使いました。もっと薄い板を何重にも積み重ねて段差が少なく徐々にテーパー状にすれば良いのですが邪魔くさいですね。ここまで合計約13時間かかりました。片面塗って垂れない程度まで乾かしてさらに裏面ですので時間がかかります。
右写真はFRP積層の材料(ガラスマットは写っていません)と道具です。左写真はマットのカス(繊維)が作業用手袋に付いてなかなか取れない状態です。ガムテープで貼ると取れやすいです。スポイドはメモリ付きの10cc用の物を用意しました(以前の船底塗料時の物)。基本は常温(15度〜20度)では樹脂やプライマー・トップコートは1%の配合です。1kgで10ccの硬化剤の配合です。気温が低くなると2%まで増えます。また5度以下と30度以上は作業不適です。また湿気にも注意を払い(雨はもちろん結露にも注意)、あげくは直射日光を避けなければなりません。屋外ではなかなか難しい条件です。
今回の一番難しい作業です。船底に増設バウキール部の接合です。FRP積層作業は初めてですので戸惑うことばかりです。増設用バウキールをネジで留め、樹脂に硬化剤を混ぜてローラー(百均)で積層していきます。しかし最初大きな布で始めたのと当然上下逆さまの状態なのでなかなか貼り付いてくれず、そう簡単にはいきません。樹脂も垂れてきます。樹脂を接着剤代わりとして貼り付けますが、面積が大きいとマットの重みですぐにポロッと落ちてきます(この場合も二人がかりならかなり楽です)。また一番難しいのは湾曲している箇所はそのままでは平面のマット布がきれいにピタッと張り付いてくれません。また先端の薄いキール部はマット布が大きいと折り返して向こう側へと貼り付いてくれません。途中ハサミで余る部分(空気が残る)を切りながらなんとか接着させていきます。時間が過ぎてくると硬化が始まり液体からゼリー状へと変化してきます。こうなるとくっつきません。
わかったことは大きな平面では問題ありませんが、段差や湾曲している箇所は小さな布を何枚も使い少しづつずらして貼っていくことです。付け根の段差には空気がたまりやすいのです。何回か試行錯誤しながら何とか写真の通りになってきました。2時間ぐらい経過すると押してもびくともしません。これで大丈夫だと思いますが、万一の場合に備え付け根部分の補強をしたいですが樹脂切れです。ネットで樹脂のみ(2000円)1kg注文します。養生をして来週に備えます。
ここまでの合計時間はおおよそ16時間です。かかった費用は材料費(追加樹脂含む)だけで合計7500円です。あとのトップコートも前回の残りがあります。消耗品はおおよそ1500円程度かかりました。合計約9000円です。剥離剤やトップコート等持ち合わせていない方はあと数千円必要です。
追加注文の樹脂が届き最後の追加補強(マットと樹脂塗布)を施します。上記でマスキングテープを貼っていましたが失敗でした。当然樹脂が固まりテープが剥がれません。なんとかノミを使って剥がしてからマットと樹脂で船底と増設部の境を中心に接着部の補強をしました。これでマットと樹脂関係は終了です。ここまで合計約18時間です。
電動サンダーで適当に磨き成形をします。その後濡れた布で細かな粉を拭き、乾けばアセトンで再度汚れを除去します。そしてトップコート(黒色)を塗ります。トップコートも樹脂同様硬化剤の比率があるので注意して混ぜます。ローラーで塗っていますので仕上がりが今イチです。スプレーガンならもっと綺麗に出来ると思いますが、乗っている時は海の中ですので気にしなくて良いでしょう。サンダーでもっと丁寧に磨けばもっと綺麗になると思いますが、邪魔くさいので適当としました。

結果合計時間は約20時間です。かなり試行錯誤をしましたが、次回もし再度トライすれば12〜13時間ぐらいでできるかと思います。
 
全体の写真です。増設部の大きさは長さ約90cm・幅は一番広い所で18cmです。三角形と仮定して面積は約810ヘーホーセンチメートルです。四角形に換算すると29cm弱四方となります。もう少し下部に出っ張りがあった方が良いかと思いますが、小さな艇ですので無難に小さめにしてみました。もし効きが全然ダメだったら面積を増すこともFRPではできます。
考察(留意点と注意点)
初めての作業でしたが自分が頭で描いていた作業と実際の作業とは異なる点が多々ありましたので紹介したいと思います。
  • ガラスマットと樹脂の接着では思ったよりかがっちり固まるのであまり、船底のラインと増設部のラインがピッタリ密着する事を重要視しなくても良かった。ある程度は必要だがミリ単位では不要です(5ミリ程度の隙間は可)。
  • 船底部と増設部の隙間や増設部の段差やテーパー状の部分を電動サンダーで考えて磨き滑らかにしたが、段差は木工用パテ等使って盛り合わせてからヘラで滑らかに成形した方がより楽で綺麗になったと思う。後日ホームセンター(ロイヤル)で敷居の段差解消のための幅広いテーパー状の物が販売されていた。次回もし製作する機会があれば絶対に使用したいと思った。
  • 増設部を先に単独でマットを貼ったが船底部と合わさる部分に樹脂が垂れないようにしなければならなかった。固まると樹脂が出っ張って密着できなかった(その部分をサンダーで削れば良いのだが邪魔くさい)。仮留めのねじ穴部も同じでボルトナットでふさいでいたが、そのボルトも樹脂で固まり取れなくなっていた。また穴に垂れると細くなりネジ留めする時に苦労した。
  • 安価なガラスマットではなく、やや高価だがガラスクロスの方が最後の仕上がりが綺麗だったと思う。またマットは細かな針状の物が多く扱いにくい(樹脂と合わさると閉口する)。もちろん素手だとチクチクするしすぐにバラバラになる。
  • 木材の成型はカンナも使ったが、電動グラインダーの方が一気に削れて効率が良い。カンナは湾曲部には不向きである。
  • 樹脂の塗布は上下逆さまの状態だったのでかなり難しい。ポタポタ落ちるので直下の養生や服装(ゴーグルも)に注意は必要。
  • マスキングテープは目印としては良いのだが、グラインダーで削った後は樹脂を塗る前に剥がさないとダメ。樹脂の塗布はやや狭い範囲で塗らなければならない(船底の塗料部にかからないようにする)。
  • ガラスマット(クロス)を貼る場合、特に平面ではない湾曲部は綺麗に貼れない(空気が残ると空洞になる)。小さな(細い)マットで何回かに分けないと無理(大きなマットで一気に貼るはNG)。
  • 樹脂はできるだけ小分けにして塗るようにする。手こずると時間がかかりゼリー状になると塗れない。硬化剤も多めに入れるとすぐに硬化が始まるので少なめにする。
  • 注意書きにもあるのだが、樹脂にたくさんの硬化剤を入れると発火する危険性がある。排油ボックスに残ったゼリー状の樹脂を捨て、後片付け時に残った少しの硬化剤も同じ箱に垂らしたら発煙していた。あとで気づきあわてて消火した。
  • 板の大きさはケチらずにもう少し幅が広い方がより深くせり出すように出来たかも?。
  • 道具や消耗品はかなりの物(ローラー・塗装バケツ・マスキングテープ・ゴーグル・手袋・)を百均で購入したが充分使用できた。電動器具(電動ジグソー・電動サンダー・電動グラインダー・電動カッター・電動ドリル)は従来から持っている物で間に合わせた。
  • 接続部の塗装剥がしに使用する剥離剤は必要ないかも知れない。範囲が狭いので電動サンダーでOK。

その後1/28釣行時に効果を確かめてきましたので報告します。まず滑走して変わったことは直進性がかなり良くなったと言うことです。今まではステアリングの操作をしなければすぐに右や左へゆっくりと進んでいきましたが、今回はかなりの時間まっすぐを保ちます。そして斜めからの波には乗り上げてかわすはずが反応してバウ側がやはり少し振られると言うことです。まあ相殺しても効果はプラスかなと思います。そして肝心のスパンカーを張った潮や風の流れに沿って船を立てるという操舵ですがビタッと立ってくれます。今まではせっかく微速操舵システムがあるのですが、フラフラして一定しませんでした。何度もステアリング操作をしたり、スピードを上げたり切ったりをしなければなりませんでした。しかしバウキール増設部の働きでフラフラすることが無くなりました。微速もバッチリ効き手を離して釣りに専念できるようになりました。今まで何も無かったほぼフラットなバウ船底ですが、少しの抵抗板が出来たおかげで横に流される事が無くなった感じです。苦労して作った甲斐が有りました。良かった!。